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資料(vol5) | 吊元金具

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1.吊元金具(吊元接合部材)とは

 吊り天井を構成するためには、躯体などから吊りボルトを吊るすための部材:吊元接合部材が必要になります。S造・RC造では上層階の床スラブや屋根スラブは鉄筋コンクリートとなっているため、『コンクリート埋込み型の鋼製インサート』や『鋼製デッキに取り付ける吊金具』を吊元接合部材として使用します。
 特殊な空間として、ぶどう棚や鉄骨母屋などから吊り天井を設けることがあります。この場合、C形鋼※1・H形鋼などの『形鋼に固定する吊元金具』を用いる必要があります。
 ここでは、形鋼に固定する吊元金具(以下、吊元金具)についてご紹介します。


※1 このページにおいては、C形鋼とはリップ溝形鋼のことを表す。当社製品には、LG(エルジー:ライトゲージ:軽量形鋼)という表現もあるが、全てC形鋼を表す。LG(LGS)という表記は、板厚が6mm以下の鋼材全般を表す場合もある。


2.吊元金具を使用する状況とは

 吊元が、床スラブではなく、C形鋼やH形鋼になる状況とは、ぶどう棚(躯体から吊り下げられた鉄骨枠)を設ける場合や、親梁・小梁に干渉して、スラブからインサートが設けられない場合などが考えられます。
 ぶどう棚を設ける状況としては、大型の空調設備を躯体下に固定するため、天井裏に一定のスペース確保が必要な場合、天井懐(吊り長さ)が極端に長くなることを避けるために、鉄骨を中間に設ける場合などがあげられます。



3.規格・仕様など

3.1 吊元金具の規格・仕様

 JIS(日本工業規格)には、屋内に用いる鋼製下地材(天井・壁)についての規格(JIS A 6517)があります。そこに記載されている天井下地材付属金物は、つりボルト、ナット、ハンガー、クリップ、各ジョイント(S野縁、W野縁、野縁受け)の7種類となっており、【吊元金具】についての記載はありません。
 標準仕様書(1)には、『吊りボルトの躯体への取付けは、(省略)、鉄骨の場合、溶接等の適切な工法を用いて取り付ける。 』とあり、特に詳細は書かれていないため、個別に判断する必要があります。具体的には、材質(表面処理)、ボルトから吊り下げられる重量(自重)のほか、耐風圧、耐震(ブレースを取付けても壊れない)、落下防止(外れない)性能が必要になる場合があります。
 検討に際し試験報告書が必要な場合には、問い合わせフォームよりお問い合わせください。



3.2 母材種類

 吊元金具の対象となる母材は、
①リップを有するC形鋼
②H形鋼・アングル・Z形鋼など、一定の厚みがある形鋼(以下、H形鋼等)
 の2種類に分けられます。
 ①に対応する規格としては、JIS G 3350:一般構造用軽量形鋼。②に対応する規格としては、JIS G 3192:熱間圧延形鋼などがあります。
 金具の適用範囲は、主に板厚とリップ高さになります。カタログより詳細をご確認ください。

C形鋼 H形鋼等
吊元金具の母材となるリップ付き溝形鋼(C形鋼)の参考写真 吊元金具の母材となるH形鋼、アングルの参考写真


4.製品の取付状況

 母材ごとに、当社製品の取付状況をご紹介します。個々の製品情報は、吊元金具ページでご覧になれます。



4.1 C形鋼

 C形鋼用の吊元金具を固定仕様ごとに示します。


固定仕様 固定部位:下部リップ 固定部位:側面
簡易固定 C形鋼(LG)の下部リップに簡易に固定ができるタイプの吊元金具の参考写真メリット:簡単施工
デメリット:耐震ブレース固定不可
-
ビス固定 C形鋼(LG)の下部リップに仮止めをしてビス固定ができるタイプの吊元金具の参考写真メリット:施工性と強度を両立
デメリット:母材に注意する必要(後述5.3)
C形鋼(LG)の側面部にビス固定ができるタイプの吊元金具の参考写真メリット:母材の断面性能を十分に発揮
デメリット:施工性

 下部リップ簡易固定は、吊元に上がらずに取付けが可能ですが、3分ボルトの締付により固定しているため、大地震で横滑り等がおきる可能性があります。母材にビス固定が可能な製品がありますが、水平試験は実施していません。
 ビス固定タイプは、全て吊元に上がる必要があります。固定ビスは2~4本となっており、作業手間はかかりますが、ビスの引抜き力、せん断力で強度負担ができるため、安全性が求められる天井でご利用いただけます。水平強度の記載があるものは、耐震ブレースの固定も可能です。
 側面への固定は、ビスを4本固定する手間はかかりますが、母材の局部変形は生じにくくなります。吊元アングルの場合、ビスの引抜き耐力は別途考慮が必要です。



4.2 H形鋼等

 H形鋼等の吊元金具は、すべて形鋼の水平面端部に固定します。施工・用途別に示します。


用途・施工 簡易施工 吊元施工
一般用 H形鋼の下部フランジやアングルに簡易に固定ができるタイプの吊元金具の参考写真 H形鋼の下部フランジやアングルに付属のボルトでしっかりと締め付け固定ができるタイプの吊元金具の参考写真
耐震用
脱落防止
or
耐震補強
- H形鋼の下部フランジやアングルにビスやボルトで外れないようしっかりと固定ができるタイプの吊元金具の参考写真

 簡易施工タイプは、吊元に上がらずに取り付けが可能ですが、3分ボルトの締付のみで固定されています。そして、金具の板厚や形状の都合、大きな締付力が入りにくいため、横揺れに対し滑りやすくなります。どの程度の横揺れで金具が滑るかは、吊り重量や地震力により異なります。
 吊元施工の一般用は、六角ボルトでフランジ面に固定でき、また、金具板厚も厚いため、簡易施工に比べて摩擦力が期待できます(水平方向の強度検証は行っていないため、一般用としていますが、一定の摩擦抵抗は有していると考えられます)。
 耐震用には2種類あり、ブレース固定用と落下防止用があります。ブレース固定用は、写真の左のようにH形鋼等にビスで貫通穴を設ける必要があるため、ビスにより母材欠損をしてよいのか確認が必要です。H形鋼の場合、構造部材であることが多く、穴をあける行為がNGになる可能性があるため、事前の確認は必ず行ってください。



5.強度・荷重

 当社では、接合部の強度試験を実施し、許容静荷重・許容耐力をカタログに記載しています。



5.1 強度種類

 吊元金具の強度は、
①鉛直方向のみ
②鉛直方向+水平2方向
 の2種類あります。
 鉛直方向引張とのみ記載しているものに関しては、水平方向への強度検証は行っていません。耐震ブレースを取り付けたい場合、水平方向に対する性能が要求されている場合には、水平方向の許容値が記載してある製品をご利用ください。


鉛直方向のみ 鉛直方向+水平2方向
吊元金具の試験方向の参考図


5.2 試験

 当社の試験方法は、C形鋼等の母材長さを100mmとし、両端部を変形しないようしっかりと固定しているため、母材側の変形等は考慮しておりません(後述詳細5.3)。
 水平方向の試験は、当社独自の方法になります(吊りボルトの水平方向への加力)。
 水平方向の評価方法は、『建築物における天井脱落対策に係る技術基準の解説』の方法を参考にしています。



5.3 C形鋼:下部リップ固定金具について

 C形鋼の下部リップに固定する場合、金具接合部の許容値が大きくても、断面形状によっては母材の局部的な変形が起きるおそれがあります。通常より大きな重量が想定される場合で、母材の断面幅方向が大きい・板厚が薄い際は、ご注意ください。

吊元金具の下部リップに固定する場合の注意点の図
下部リップ固定C-60の場合の試験の参考写真 下部リップ固定C-100の場合の試験の参考写真
C-60x30x10x2.3t
(4kN付近)
C-100x50x20x1.6t
(4kN付近)

 写真は当社での試験例(4kN時)です(※4kNは製品の許容値を超えていますが、変形の違いが分かりやすいため載せています。通常は、このような母材変形が現れない固定方法で試験をしています。)。板厚が1.6t、幅が50の場合は母材側変形が先行していることがわかります。(一般的には、吊元の母材は2.3t、3.2tを用い、1.6tは使用しません。)
 母材側対策として、上下リップをPLでつなぐ、板厚の厚い部材(3.2tなど)にする、といった方法があります。



5.4 天井裏作業による金具変形

 石膏ボード(PB9.5)2層張における吊り天井重量は20kgf/m2弱です。そこに、設備の入替等で、作業者(例えば70kgf)が天井に乗った場合には、吊元1か所に固定荷重と積載荷重(+衝撃荷重)が加わるため、製品許容値を超える場合があります(例えば、許容静荷重40kgf/ヶ)。目視で判別できなくても、金具によっては塑性変形する可能性があります。このような状態で地震力が加わると落下する恐れが高まります。
 天井の施工後に、天井裏での人的作業が想定される場合大きな許容値・外れにくいタイプの金具をご検討ください。これは、吊元金具だけでなく、ハンガー、クリップなど、天井下地付属金具全般に当てはまります。また、キャットウォークなどを設け、吊り天井に直接乗ることのないような対策をご検討ください。



6.既存天井の対策

 当社の吊元金具の多くは鉛直方向のみ許容値を掲載しています。事後的に耐震対策をしたい場合、どのような方法があるか使用例をご紹介いたします。


母材 C形鋼 H形鋼等
使用例 C形鋼(LG)用吊元金具に後付けで補強が可能な金具の参考写真 H形鋼用吊元金具に後付けで対策が可能な金具の参考写真
製品名 左:LGキャッチャー
右:特殊LGフック補強金具
H鋼用吊元金具 + 補助金具

 LGキャッチャーは、当社製の吊元金具だけでなく、他社製品にも取り付け可能なため、幅広くご利用いただいております。
(※脱落防止用です。鉛直方向は強度が増加します。一方、水平方向の検証はしていないため、耐震ブレースの取付には向いていません。)



7.施工上の注意点

①C形鋼用の金具に使用するビスの径には十分に注意してください。2.3mm以上の母材に径4mmのビスを固定する場合、電動工具で締め付けすぎると、破断する場合があります。破断してしまった場合、再度ビスを打つには位置をずらす必要があり施工手間が増えてしまいます。締め加減が難しく破断してしまう場合には、径の太いビス(5mm)をご使用下さい。径を太くする際は、ビスの板厚適用範囲を別途ご確認ください。

②簡易施工タイプの金具(吊りボルトで締め付けるタイプ)の場合、金具の形状によっては、大きな締付力は入力されません(2Nm以下の製品もあります)。電動工具で締め付けすぎると、金具が大きく変形します。締め加減には十分にご注意ください。吊り重量により、ボルトがC形鋼から離れることのないよう一定の締付トルクは必要になりますが、写真のように、締付で金具が大きく広がると、上述した『特殊LGフック補強金具』が取り付けらなくなります。(※写真は極端な例です。)


吊元金具の施工時の注意点を表した参考写真
特殊LGフック

8.まとめ

 吊元金具について、基本的な内容をご紹介しました。対象となる吊り天井に合わせて最適な製品をご利用ください。
 個別の製品については、製品情報ページやカタログでご確認ください。
 現場の状況に適した製品がない場合には、特注生産も可能ですので、お気軽にお問い合わせください。


参考図書:(1)公共建築工事標準仕様書(建築工事編)平成31年版,国土交通省

※2020年5月28日時点での情報になります。6月29日、一部修正。

※掲載情報の製品は、廃番になる場合があります。最新情報はWEBカタログよりご確認ください。

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