
・間仕切壁下地に使用される構成部材についての説明
・特殊な仕様についての簡単な説明
作成日:2020年10月06日(令和2年)
最終更新日:2025年07月23日(令和7年)
1.間仕切り壁とは
間仕切り壁とは、建物内部の空間を区切るために設けられる壁のことです。空間の分割に加えて、配線・配管スペースの確保、防音・耐火性能の向上、空調効率の改善など、用途に応じた多様な機能を持ちます。
2.間仕切り壁の主要部材
ここでは、鉄骨造(S造)や鉄筋コンクリート造(RC造)で使用される間仕切り壁用の軽量鉄骨下地(LGS下地)を、JIS規格や標準仕様書を例にご紹介します。なお、各仕様の最大高さは5mまでとなっており、5mを超える間仕切り壁(高壁)の場合は特記によります。
【高さ5mを超える間仕切り壁(高壁)を作る場合】
この場合は特別な設計が必要です。以前は、高さ5m以内に中間梁(角パイプ)を設けて対応する方法が主流でした。しかし現在では、物流倉庫の建設などにより各メーカーが高壁対応の独自工法を開発しており、 中間梁なしでも最大7~8m程度の壁を施工できる製品が登場しています。これにより、 内装業者だけで施工が完結できるという利点があり今後は需要が増える傾向にあります。
2-①ランナー

「ランナー」は、間仕切り壁下地の上下に取り付けられ、スタッド(間柱)を垂直に立てるためのレールです。スタッドの規格・壁の仕様(遮音、耐火)などにより、ランナーの幅が定まります。JIS規格では板厚0.8mmとなっています。ランナーの固定は打ち込みピンやコンクリートビスで行い、取付間隔は現場の指示に従ってください。
【上部ランナー】
躯体、床版下、梁、鋼材、吊り天井、または直天井に取り付けます。
(床版下とは上層階スラブの下層階側デッキプレートの事)
【下部ランナー】
躯体や置き床(高床)などに取り付けます。
※耐火間仕切りの場合は、上下の躯体間にランナーを設置し、その間にスタッドを配置します。面材についても、上下躯体との間に隙間が生じないように加工する必要があります。必ず、指定された施工方法に従い、確実な取り付けと加工を行ってください。
2-②スタッド

間仕切り壁下地に用いられる「スタッド」は、上下のランナーに差し込み垂直に立てる間柱です。JIS規格品は写真のようにコの字型断面をしていますが、角スタッド(非JIS)を用いる場合もあります。角スタッドの場合、スペーサーや振れ止めを取り付けないため工程数は少なくなりますが、スタッド同士の拘束はなくなります。
コの字型スタッドには、振れ止め用の貫通孔が@1,200mmで空いているため、スタッドを所定の長さに切断する場合には、貫通孔のずれが生じないよう、下端をそろえ上端側を切断します。上下のランナー内寸より10mm程度短くします。
切断後、立て込む前にスペーサーと呼ばれる金具を@600mm程度に留め付けます。スタッド用スペーサーを設けることで、スタッドのコの字断面の変形が抑制されます。また、振れ止めの拘束にも使用されます。
スペーサーを仕込んだスタッドを上下のランナーに差し込みます。スタッドの取付間隔は現場の指示に従ってください。
2-③振れ止め

間仕切り壁下地の「振れ止め」とは、コの字型スタッドを連結するための水平材です。スタッドに設けられた貫通孔にリップを上向きにして通し、スペーサーと呼ばれる金具で上から押さえつけることで固定します。
公共建築工事標準仕様書では、「振れ止めは、床面から約1.2mごとに設ける」とされていますが、上部ランナーから400mm以内に位置する箇所は省略が可能です。JISでは、C-19・C-25の2種類の断面が記載されています。
ランナー・スタッド・振れ止めのJIS規格は、次の表のとおりです。
サイズ | スタッド | ランナー | 振れ止め | 高さの 区分 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|
記号 | 寸法 | 記号 | 寸法 | 記号 | 寸法 | ||
50形 | WS-50 | 50x45x0.8 | WR-50 | 52x40x0.8 | WB-19 | 19x10x1.2 | 2.7m以下 |
65形 | WS-65 | 65x45x0.8 | WR-65 | 67x40x0.8 | WB-25 | 25x10x1.2 | 4m以下 |
75形 | WS-75 | 75x45x0.8 | WR-75 | 77x40x0.8 | 4m以下 | ||
90形 | WS-90 | 90x45x0.8 | WR-90 | 92x40x0.8 | 4.5m以下 | ||
100形 | WS-100 | 100x45x0.8 | WR-100 | 102x40x0.8 | 5m以下 |
2-④開口補強材

間仕切り壁で区切られた空間を行き来するには、出入口としての開口部が必要です。また、空調ダクトなどの設備配管を通すためにも、壁に開口を設ける必要があります。これらの開口部には、構造的な強度を確保するために補強材の設置が必要となります。
【出入口等の開口部の補強】※特記によらない限り、次の通りとします。
- 左右の縦枠は補強材を使用して、スラブ〜スラブ間や床版下〜スラブ間など施工する場所の(最上部~最下部)に通し、あと施工アンカーなどで固定した取付用金物に取り付けます。(床版下とは上層階スラブの下層階側デッキプレートの事)
- 上下枠も補強材を使用して(横材・水平材)は、左右の縦枠補強材に取付用金物を用いて取り付けます。
- 開口部の設置により切断されたスタッドは、上下枠補強材に固定されたランナーに取り付けます。
【ダクト類の開口部の補強】※特記によらない限り、次の通りとします。
- ダクト周りの開口補強はランナーとスタッドで施工します。
- 左右縦部材は開口付近スタッドで最長のスタッドを利用して上下ランナーに(開口補強取り付け金具及び多目的ピース)などを使い固定します。
- 開口部上下横部材は(開口補強取り付け金具及び多目的ピース)などを使いスタッドに固定した後ランナーを施工します。
- その後必要に応じてカットしたスタッドで壁を施工します。
公共建築工事標準仕様書に記載の補強材(C形鋼・ライトゲージ・LG)は、次の表のとおりです。なお、スタッドの幅に対して補強材が小さくなっています。(例えば、65形に対しC-60を使用)
民間工事では、スタッドと同じ幅の補強材を使用することもあります。(例えば、65形に対しC-65を使用)
※65形、75形で4mを超える場合、補強材を2本600mm程度の間隔で溶接して抱き合わせたものを使用してください。
※特記事項は5m以上の場合です。
サイズ | 出入口及びこれに準ずる 開口部の補強材(mm) | 補強材取付け 用金物(mm) | 高さの区分 |
---|---|---|---|
50形 | ‐ | ‐ | 高さ2.7m以下 |
65形 | C-60x30x10x2.3 | L-30x30x3 | 高さ4m以下 |
90形 | C-75x45x15x2.3 | L-50x50x4 | 高さ4mを超え4.5m以下 |
100形 | 2 x C-75x45x15x2.3 | 高さ4.5mを超え5m以下 |
3.間仕切り壁の特殊金具
各部材に取り付ける特殊金具をご紹介します。
3-①ランナー用金具
ランナーは、躯体の状況によって直接固定する事が難しい場合があります。その場合、金具などを用いて固定します。
デッキまたぎプレート

合成スラブ補強部にランナーを直接固定できない場合、(合成スラブ補強部中間にランナーを取り付ける場合)などに使用する金具です。なお、デッキとランナーの間に隙間が生じる場合は、防音性や耐火性などの観点から、別途適切な処置をご検討ください。
ハリシタ ピースロック・ハリシタピースロックZ・ハネダシサポート

鉄骨梁の下にC形鋼を設ける場合に使用する金具です。次の特長があります。
構造体となる鉄骨などに対して、溶接を行わずに固定が可能です。これにより、省力化と無溶接施工を実現できます。
取り付け対象のC形鋼は、内装工事業者によって、事前に無溶接で取り付けることができるため、施工が効率化され、工程の一元化が可能になります。
3-②スタッド用金具
スペーサー

JISスタッドなど、コの字型のスタッドを使用する場合には必須の金具です。@600間隔で固定します。画像のように振れ止め材(@1,200)を固定する役割もあります。
JISスタッドはJIS規格品ですが、各メーカーでリップの巻き込みのディテールは異なります。
万能ブラケット

スタッドに合板を固定するための金具です。この合板は、ビスでの固定が必要となる各種壁付け機器(たとえば転倒防止金具、ピクチャーレール、手すり、吊戸棚、エアコン、壁掛けテレビ、壁付照明、トイレットペーパーホルダー)などを取り付けるために設けられます。
合板(板厚12mm)がスタッド面と揃うため、ボードが膨らみません。金具自体も板厚0.6mmのため、ふくらみを最小限に抑えてくれます。また、金具を中央で分割できるため、金具一つで左端、右端の固定に利用できます。
ランナースペーサー

この金具は、間仕切り壁内のスタッドを千鳥状に配置し、隣り合うスタッドを各スペース専用とすることで、スタッドの共有を避けるためのものです。スタッドの上下端にこの金具を取り付けることで、上部・下部のランナー(支持材)は共通で使用しながらも、各スタッドをスペースごとに独立させることができ、音の伝達を効果的に抑えることができます。
このように、隣り合う空間のスタッドを共有せず、それぞれ独立させることで構造的な「縁切り」を実現し、高い遮音性能を確保することができます。主に、遮音性が重視される部屋間の間仕切り壁に用いられています。
ランナーのサイズ選定には注意が必要です。ランナーの幅は「スタッド + ランナースペーサー」※です。
また、振れ止めが取り付けられず、高さ制限など従来よりも厳しくする必要があるため、独自で判断されず、各メーカーの仕様に従ってください。
※65形スタッド+10mmランナースペーサーを使用する場合、内寸75mmのランナーが必要となります。
3-③振れ止め用金具
端部スペーサー

振れ止め材端部は、スタッドのかかりがわずかしかなく、固定が不安定になります。
端部スペーサーは、壁端部のスタッドに振れ止めを安定して固定するための金具になります。
振れ止め用ジョイント

振れ止め材を連結するための金具です。定尺以上の長さの壁の場合に使用します。
3-④開口部用金具
開口補強用金具・多目的取付ピース

開口補強材を固定する際に使用する金具です。
当社製品には2種類あります。
【開口補強用金具】
縦枠補強材となるC形鋼の上下の躯体への固定に主に使用されています。(中央アンカー穴とビス穴有り)
【多目的取付ピース】
横枠補強材の固定に主に使用されています。 (ビス穴のみ)
※開口補強用金具、多目的取付ピースの選定サイズ
スタット75まではL30x30x3以上の金具、スタット90以上はL50x50x4以上の金具を使用してください。
4.まとめ
間仕切り壁下地の主要構成部材と特殊金具についてご紹介しました。ここでご紹介した内容はあくまでも一般的なものであり、角スタッドなど非JIS材を使用する場合や風圧などの特記項目がある場合には、設計図書などに従い、適切な部材をご使用ください。
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